論理療法について 『幸せなカップルになるために』①

アメリカの臨床心理学者であり、論理療法の創始者として知られたアルバート・エリス。
そんな彼が、なんと、カップルのコミュニケーションのための本を2000年に出版している。
アドラー心理学の影響を受けており、本書の内容もアドラー心理学との近似性を感じさせるものになっている。

幸せなカップルになるために―エリス博士の7つのルール

論理療法について


論理療法では、前提として、すべての人間の悩みは、発生した事象そのものに原因があるのではなく、その出来事を受け止める人間に原因がある、と考える。
そのうえで、出来事の受け止め方=認知の方法を変えていこうという心理療法である。

その理論は、「ABC理論」「イラショナル・ビリーフ」にまとめられる。

ABC理論
【A】 activating event :ある出来事が起こる
【B】 belief :信念の枠組み、思い込み
【C】 consequences :結果

すべての出来事は、「A×B=C」の構図で解釈されている。

たとえば「黒猫が目の前を横切ったときに胸元で十字を切る」という行動に対して、その理由を問われた場合「黒猫を不吉とするキリスト教の文化」と答えるだろう。
この事象をABC理論に当てはめると以下のようになる。
 【A】 黒猫が目の前を横切る
 【B】 黒猫を不吉とするキリスト教の文化
 【C】 胸元で十字を切る

ここで重要なのは【A】と【C】の間には、本来はなんの因果性もないということ。
あくまでも、その2つを結合させているのは【B】なのである。

論理療法は、この【B】を「非合理」なものから「合理的」なものに正していく試みである。

たとえば、上司にしょっちゅう怒られる人が「上司は私のことが嫌いなんだ」と判断したとしよう。
その背景には、このような信念の存在が考えられる。

 「私はすべての人から愛されなければならない」

明らかに非合理的な思い込みである。
しかし、この思い込みが存在する限り、自分が叱責されている理由は「好き/嫌い」の世界以外に考えられない。
極端な場合、自分がミスを繰り返していても、叱責される理由は「嫌われているから」になる。

論理療法では、こういった非合理的な思い込みを「イラショナル・ビリーフ」と呼ぶ。

イラショナル・ビリーフの特徴
・非現実的かつ非論理的
・自己・他者・状況について、要求・強要・義務感がつきまとう

論理療法では、絶対的な命令や要求を作り出すことを「ねばならない化」と呼ぶ。
単なる好みや願望であったものが、いつのまにか「ねばならない」「べきだ」にすり替わってしまう。
こうした「ねばならない化」は、現実に起こっていることが自分の願望とかけ離れている場合に起こるという。

必要なのは「現実」と「あるべきこと」が違うことを認めることである。

チベット医学では、すべての生き物は生まれながらにして病んでいる、とする。
すなわち、つねに病と共存することが生きるということになる。

同様に、我々を取り囲む、状況・他者・そして自分自身についても、
つねになんらかの欠陥と共存していることを認め、許すこと。
それが論理療法のいう現実との和解の方法に思えてならない。
(※ 個人の見解です)

以上が、本書にて紹介される論理療法の方法論である。
準備は整った。
いよいよ、幸せなカップルになるための七つのルールが紹介される。
本稿でも稿を改めて、七つのルールについて紹介していこう。

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